筒 井 舞


 私は、宮本小学校四年二組の森下真由美と言います。
私が経験した不思議な不思議な話しを書きます。
 


 この前、総合学習の時間に、三、四年生で地域の事を勉強しました。
 宮本小学校の西隣にある筒井八幡神社の宮司さんが学校に来られて、筒井八幡神社周辺の千年前の事から、戦国時代の事、明治時代の事などを教わりました。


 その中で、私は「つつの井」と呼ばれている井戸の話に興味を持ちました。その井戸は、今でも筒井八幡神社の境内にあり、「つつの井」と書かれた石碑の横にあります。
 昔々、森の中にものすごく澄みきった涌き水があって、それを村人が飲み水に使うために、その周りを筒状に囲ったそうです。
 その形から「つつの井」と呼ばれるようになり、現在の「筒井」と言う地名もここから生まれたそうです。


 私は早速友達と「つつの井」と呼ばれている井戸へ探検に行く事にしました。井戸をのぞくと、澄んだ水がありました。その水の表面に私達の顔を映して遊んでいました。
 すると水に映っていた二人の顔が段々とゆがみだしたではありませんか。
そして私達二人の顔が分からないくらいになってきました。
 「キャー怖い」
 と言って友達と顔を井戸から上げて周りを見渡しました。


 何と今まで見た事もない景色に変わっているではありませんか。
 何か向こうの方で大勢の人達が争っているようです。その集団が徐々にこちらに近づいて来ます。良く見ると何とみんなお侍さんの格好をしています。
「きっとタイムスリップしたんだ。」と友達がつぶやきました。
私達は、あまりの驚きと恐怖で、井戸の蔭に身を小さくして隠れていました。
しかし一人の侍に見つかってしまいました。
侍が刀を振り上げて大声で「そこに隠れている二人出て来い!」と叫びながら私達に近づいて来ます。


「あーもーだめだ。捕まる!」と思った瞬間、どこからか矢が飛んできて侍の刀が「カキン」と金属音をたてて真っ二つに折れてしまいました。
刀を折られた侍は、驚いた様子で逃げていきました。
 馬に乗ったお侍が走ってきました。
 「おい!二人とも怪我はないか?」
 「は、はい。大丈夫です。」今、矢を放ったお侍です。
馬から下りたお侍は、何と2メートルを超える大男です。


「ここは危険だ。一刻も早く安全な場所に行こう。二人とも馬に乗りなさい。」と言ってお侍が私達二人を馬に乗せてくれました。
しかし、いくさで馬は大変疲れている様子でした。
すると何とお侍は私達二人が乗った馬をそのまま肩に担ぎ出したではありませんか。 


 そしてそのままお侍の陣地まで歩き始めました。何と言う怪力でしょう。
 陣地に着くと私達に水と、おむすびを出してくれました。
 それを食べて少し気が落ちつきました。ボツボツと私達の話を始めましたが、大勢のお侍は、半信半疑の様子でした。


 歳を取ったお侍が言いました。
「二人を助けたのは、筒井村の太郎と言う者じゃ。歳はまだ十六歳だが、矢を放てばこの筒井村から遥か武庫川まで達するほどの矢の名人で、怪力ぶりは見ての通りの本当に勇気のあるすばらしい若武者じゃ。」
「えー、あの筒井村の太郎さん。」びっくりして友達と顔を見合わせました。
この前宮司さんから、筒井村の太郎の話を聞いたばかりだったからです。
太郎さんに言いました。


「私達は太郎さんの事を聞いた事があります。そして太郎さんみたいな立派な人になれるようにと、筒井舞と言う踊りまであるのですよ。」
太郎さんは、大変驚き、そして喜び「是非とも、筒井舞を舞って欲しい。」と言いました。
私達は一生懸命筒井舞を舞いました。
太郎さんも一緒に舞ってくれました。
「この戦国の世に生まれて今ほど心の安らいだ時は無かった。ありがとう。」と言った目に涙が光っていました。


私達も戦争の無い平和な時代に早く帰りたくて泣いてしまいました。
「私の命に代えてでも無事に君達の時代に帰れるように手助けしよう。」と言ってくれました。

私達三人は、タイムスリップした井戸に向かい出発しました。
途中危険な目にも会いましたが、太郎さんに守ってもらい無事 井戸に着きました。
私達はすぐに井戸の中をのぞき込みました。すると段々と顔がゆがみ出しました。これできっと元に戻れる。


二人は顔を恐る恐る上げました。
目に見なれた景色が飛びこんできました。
「やったー!やったー!元に戻れたぞ。」
「あ!そうだ。太郎さんに御礼を言うのを忘れていた。」井戸の中に向かって大声で言いました。「太郎さん本当にありがとう。」


この筒井太郎は本当に歴史の中にいた人物です。
筒井舞は筒井八幡神社が、筒井太郎のようにまっすぐな心を持ち、正しい事を貫き通し、勇気ある人に育って欲しいと願い、子供の舞楽として昔から舞って来ましたがしばらくの間見る事が出来ませんでした。

それを平成十年に大日商店街が復活させまた筒井舞を見る事が出来る様になりました。
私は筒井舞を見るたびに太郎さんと舞った事を思い出します。
          

 

 このお話「筒井舞」は大日商店街の北側にある筒井八幡神社のお話です。
 筒井八幡神社は祭神は応神天皇で旧筒井村の氏神。境内に清水が湧き出す井戸がありその周りに井筒が設けられたところから神社およびこの周辺を筒井と呼ぶようになりました。